りんご秘書の産婦人科日記

このチャンネルでは婦人科疾患・不妊治療・妊娠中の病気など職場で得た知識をアウトプットします

コウノドリから学ぶ産科知識⑤人工妊娠中絶を考える

 

皆さんは、「中絶」と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?

 

今の世の中では珍しいことではないと思うかもしれません。

だらしないと思われるかもしれません。

 

コウノドリの中では、10代の生徒が中絶をできず特別養子縁組制度を利用したり、

胎児に染色体異常があるとわかり、中絶を選択する回があります。

特別養子縁組のことをかいた記事もぜひご覧ください。

 

さまざまなシーンで出てくる問題です。

まだ観たことがない方はU-NEXT で観られますので、ご覧ください。

 

 
人工妊娠中絶の歴史

日本の人工妊娠中絶は、実は江戸時代がもっとも盛んだったといわれており、

法整備がされるまでは、民間で行われていた歴史があります。


その後、明治時代には「堕胎罪」として法律で禁止されましたが、

第二次世界大戦後、優生保護法の施行に伴い、中絶手術が行えるようになりました。

優生保護法は、今でこそ障害のある方の差別を助長する法律としてニュースにも度々取り上げられますが、

何と1996年の母体保護法に改正されるまではずっと適用されていました。

優生保護法の問題点はまた取り上げたいと思います。

 

人工妊娠中絶の割合


グラフを見ると、1955年以降の人工妊娠中絶の推移・割合は、年々減っており、現在は20%を下回る割合です。

 

人工妊娠中絶の理由


通常妊娠の場合、妊婦さんの「身体的理由」または「経済的理由」という理由が主に挙げられていますが、
以前取り上げたNIPTを含む出生前診断はこの「経済的理由」に含まれると解釈されており、拡大解釈に倫理的な問題があるのではないかと議論はやみません。

NIPTを取り上げた記事はこちらから

 

中絶の週数による手段の違い


妊娠初期中絶(12週未満)


日本では搔爬術もしくは吸引処置による中絶が行われています。
また、膣からの処置になりますので、子宮頸管が固い場合は、誘発分娩のときにもご紹介したラミナリアやメトロイリンテルを使い、頸管を柔らかくする処置も追加されます。

詳しくご覧になりたい方へ避妊と中絶|大阪 医療法人オーク会


中期中絶(12週~21週)


ほぼ誘発分娩と同じ過程をたどります。
子宮頸管拡張を行い、誘発剤を使用して人工的に出産させます。
12週以降は死産届を提出する必要があります。

 

人工妊娠中絶のメリット・デメリット


はっきり書きますが、「体にとっていい影響は何一つありません。」

もちろん、望まない妊娠をしてしまった方にとっての救いでもあります。

日本の性犯罪率は世界的には低いと言えますが、なくなったわけではありません。

また、女性の社会進出上、どうしても妊娠・子育てが邪魔をすることは残念ながら否定できません。

 

逆に「お金がなくて子育ては無理」という方もいると思います。

 

出産は体にとても負担のかかるものなので、身体的な理由で出産の決断をできない方もいるでしょう。


そういう方たちにとって、「中絶の選択ができない」ことがあってはなりません。

あってはなりませんが、体にとっていいことはないということも知っておかなくてはいけません。


日本で行われている処置の一つである搔爬(そうは)術とは、『掻き出す』という意味で、子宮に穴が開いたり、子宮壁が癒着した状態を作ってしまい、不妊の原因にもなることがあります。


デヴィ婦人の発言で最近話題になっていましたね…。

 

世界では認められない国もある

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人工妊娠中絶自体が認められない国があります。
主に宗教的な理由が大きく関係している場合があり、それを最も象徴している身近な国がフィリピンです。


フィリピンは国民の80%がカトリックであり、政教分離ができていない国です。

 

フィリピンは人工妊娠中絶を法律で全面的に禁止しており、闇取引をするか、流産するように努力するという悲しい方法しかありません。


母体へのダメージは計り知れないでしょう。


日本の標準が、標準ではない


日本では認められていませんが、WHOでは内服薬による人工妊娠中絶を推奨しています。
搔爬術は外科的な処置で、母体へのダメージが大きいため、これが世界の標準となっているのです。
日本も今後、恐らく認められていくのではないかと思います。

 

望まない妊娠を防ぐために

ピルの定着率が低い

日本では、「ピルを飲んでいる人=遊んでいる人」というイメージが定着していると感じますが、避妊以外にも重要な役割を果たしていますので、メリットを別の記事で、また詳しく書きたいと思います。
欧米では14~15歳前後から服用するのも一般的になっていますので、個人的にはもう少し普及してもいいのにと思ってしまいます。

 

アフターピルの普及


以前、「2020年ざわつく医局ニュースTOP3 」でも書いたように、今後薬局でも買えるようになるかもしれません。
1錠15,000円と非常に高額なので、ここを何とかしてほしい…。

 

性教育・法整備の徹底


今はYoutubeでも見られるような性教育がありますが、もっと授業でやるべきです!
そして産休・育休をもっと取りやすい環境整備をすること!!
少子化を止めたいなら、なおさら!ここ一番重要でしょう!?と個人的には思います。

 

 

先生たちにも細かい法律が! 

 実はこの母体保護法、処置を行う先生たちにも細かい規定があります。

次回は先生たちの視点から、もう少し掘り下げていきたいと思います。