りんご秘書の産婦人科日記

このチャンネルでは婦人科疾患・不妊治療・妊娠中の病気など職場で得た知識をアウトプットします

コウノドリから学ぶ産科知識⑥母体保護法指定医とは?

前回は、人工妊娠中絶についてお話しました。
まだ記事をご覧になっていない方はこちら


まだコウノドリを観たことがない方はU-NEXT で観られますので、ご覧ください。

 


ドラマの中では描かれていませんでしたが、
人工妊娠中絶を行える医師は基準が決められており、

申請をしないと行うことはできません。


ここから垣間見える問題点も、考察として書いていきたいと思います。

 


母体保護法指定医の要件

① 医師免許取得後 5 年以上経過しており、産婦人科の研修を 3 年以上


受けたもの又は産婦人科専門医の資格を有するもの。

以前の記事でも書いた、後期研修を終えていなければ、少なくとも母体保護法指定医にはなれません。
以前の記事をご覧いただくと、より理解が深まるかと思います。


②研修期間中に、人工妊娠中絶手術又は流産手術の実地指導を受けたもの

 

20 例以上の人工妊娠中絶手術又は流産手術の実地指導を受けていること。

ただし、その内 10 例以上の人工妊娠中絶手術を含むこととする。

なお、指定医師の指定を受けるために研修を受けている医師については、

原則として所属する指定医師研修機関及びその指定医師研修機関の連携施設で指導医の直接指導の下においてのみ人工妊娠中絶手術ができる。

研修中の場合は、指定の研修施設の中で、指定を受けた医師の指導のもとでのみ(つまり立ち合い)、処置を行えることとする。


都道府県医師会の定める講習会を原則として申請時までに受講していること


都道府県の医師会ごとの講習となっているため、所属医師会での講習が求められます。


さらに指定医となった後も、2年ごとに研修を受け、更新しなくてはなりません。

 

このほかに、施設の要件としても、入院設備を有し、救急体制を備えることが必要です。
ただし、中期中絶を行う場合は、必ず入院設備及び分娩を行いうる体制を有することとしています。

 

 

母体保護法指定医の問題点


ここからはわたしの主観が入りますので、現場で思う問題点としてお読みください。

 

母体保護法指定医の順守すべき事項の中に、こんな文言があります。
・人工妊娠中絶手術の実施は、指定医師として指定を受けた施設内のみとし、往診先等においては行わないこと。
指定医は申請を出すときに、実施施設となる施設を1か所、一緒に提出しなくてはいけません。

 

つまり、アルバイト先では、その病院の母体保護法指定医とは認められないのです。
 

え?どういう意味?やってることは同じでしょ?


そのねらいは次の文から見えてきます。

 

・必要に応じ術後の受胎調節の指導を実施し、少子化傾向に鑑み、初産平均年齢を引き下げるよう努力するとともに家族計画を指導すること。  

ここから見えることは、

少子化対策の一環として、今後、中絶することがないように、指導を行うこと」

 

=やたらめったら、中絶しないように注意しとけよ。

 

 

だったら言わせてもらいますけど。

 

中絶しなくていい世の中にしてくれよ。


前回も書きましたが、

 

「経済的に育てられない」

「社会的地位を手放したくない」

「仕事をもっと頑張りたい」

 

という理由で、中絶をしている方も一定数います。
そこを何ともしてないくせに、何をおっしゃる政府さん。

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うさぎさんなんて可愛いもんじゃない

 

と、この文言を見るたびに、頭の中で勝手に変換が起こってしまい、

とても腹立たしい気持ちになります。

 

いかん、頭に血が上ってしまいました。

 

人工妊娠中絶での事故


以前こんな医療事故があったのを覚えていますでしょうか?

 

中絶手術を受けた1週間後に、処置を受けた患者さんが亡くなった記事です。


この記事が出たときは、医局でも相当な話題になりました。
そして、

 

母体保護法指定医の要件をもう一度確認し、

 要件に合っていない医師がいないか調べておくように」

 

との指示があったのをよく覚えています。

 

記事の病院は、この記事が出てから閉院しました。

 

この記事以降、「中絶はやりたくない」と、

先生たちのあいだで、処置の押し付け合いのようになっていた時期があります。

(今はやっと落ち着いてきましたが…)

 

もう1つ続編の記事があります。

『水口病院』のその後

この記事の中で、問題の医師2人は

「院長に指定医の資格があれば自分もしていいと思った」

と説明したとあります。

 

これは言い逃れではなく、恐らく本当の思い込みです。


これまでにも1-2名、そうおっしゃる先生がいました。

 

医師はもちろん、何でも知っていなくてはいけません。
責任の重い仕事だから、高いお給料をもらっています。

 

それでも、すべてを把握しているわけではない。

ましてや他の処置に

「これを持っていないと処置をしちゃいけません」

というものは、産婦人科では、ほぼ存在しません。
(※これはわたしが知らないだけかも)

 

患者さんから「母体保護法の指定医がやってくれるんですよね?」

なんて確認する必要も、ないと思います。

 

ただ、一つ前の記事にも書きました。

 

「体にとっていい影響は何一つありません。」


妊娠してからは、いつだって命がけ。

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かわいい足

 

ということは忘れないでください。
では、本日はこの辺で。